2024.07.8
「融資を申し込んだけど、質問や資料請求が多くなかなか進まない」
「審査が通らなかった・・・・・」
という経験はありませんか?「金融機関が融資審査を行う際、何を重視しているのか」をあらかじめ知っておくと、「いざ」という時の資金調達がスムーズです。
融資審査にあたり、金融機関が重視するのは主に次の2つです。
1.貸したお金は何に使われるのか?(資金使途)
2.貸したお金はきちんと返済されるのか?(返済能力)
金融機関にとっての「商品」はお金です。
そして、そのお金は、個人や法人等から「預かったお金」。だからこそ金融機関は、お金を預けてくれた人(預金者)に対して、商品であるお金が適切に運用されているか、無駄遣いはされていないか、などをきちんと説明する責任があります。そのため、中小企業等から融資の申し込みを受けた金融機関は、預金者から預かった大切なお金が「何に使われるのか」「きちんと返済してもらえるのか」が最も気になるのです。
お金の主な使い道には「運転資金」と「設備資金」があります。運転資金が必要になるケースは、主に、
①売上の増加(在庫および売掛金の増加)
②販売・仕入条件の変更(代金の支払時期の前倒しによる買掛金の増加)
―等により、「支払う必要のある金額」が増加し、手元の現金・預金でカバーできない場合が挙げられます。また、経済状況の激変や災害等の外的要因により、一時的に売上が減少し給与や家賃の支払いが難しくなった場合にも融資を受けることが必要になります。
設備資金は、例えば、「店舗を増やしたい」「新たな機械を導入して作業の効率化を図りたい」といった時に必要になる資金です。設備資金の申し込みの際は、金融機関に設備等の必要性・導入効果を説明する資料(事業計画)と、その設備の「見積書」をあらかじめ用意することが大切です。
運転資金、設備資金のいずれの融資であっても、金融機関からすば、「将来、返済するためのお金(返済原資)」を生むものでなければ、融資は難しくなります。そのため、運転資金や設備資金として融資を受ける場合には、融資実行後の業績によって、「どのくらい利益が生まれるのか」「その利益からいくら返済していくのか」を、社長自身の言葉で説明できるように準備しておきましょう。これらの説明が明確で、かつ具体的であればあるほど、金融機関は融資実行を判断しやすくなります。
次のような場合に該当すると、資金使途違反となるおそれがあります。今後、新たな融資を受けられなくなったり、一括返済を求められたりする可能性もありますので、注意しましょう。
●設備資金を運転資金へ流用したとき
●設備投資における見積金額と発注金額に差があり、その差分の流用があったとき
金融機関は、融資の約定に従った元本返済と利息の支払いを求めます。そこで大事になるのが「返済能力」です。
一般的に、返済能力は、
①債務償還力
②安定的な収益性
③資本の健全性
―の3つの視点から、決算書や試算表の数字を基に確認することになります。
※返済力をチェックするための指標等は、金融機関によって異なります。これらの視点を参考に、取引金融機関と対話の機会を持つと良いでしょう。
●債務返済能力:借入金は利益2の15倍以内である
●安定的な収益性:減価償却前経常利益が2期連続赤字でない
●資本の健全性:直近の純資産額が債務超過でない
※現金・預金控除後の正味顔
※償却前営業利益(営業利益+減価償却費)の額中小企業庁、中小企業収益力改善支援研究会「収益力改善支援に関する実務指針」(2022年12月)を基に作成
いざ、資金が必要な時に融資を受けられない事態は避けたいもの。そこで、巡回監査を経た正確な月次決算データを基に、借入金の状況を定期的にチェックすることが大切です。
金融機関には、いったん融資をしたら、返済が全て終わるまで、融資先の業績改善支援を含めたフォローが求められています。滞りなく返済が実行されるためにも、融資先の最新情報を把握したいと考えているのです。
そこで、年1回の決算書に加え、「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」を通じて、定期的に試算表も提出するようにしましょう。
金融機関にとっては融資先のバックアップ体制を整えることができ、また、中小企業にとっては、金融機関から幅広く経営全般をサポートしてもらえることにもつながります。積極的・定期的な情報開示は、金融機関との信頼関係をより深める「第一歩」です。