2024.09.27
発注事業者(業務を委託する事業者)とフリーランス事業者(業務を受託する事業者)との取引の適正化等を目的とした「フリーランス法」が11月1日に施行されます。発注事業者が守るべき最大7つの義務項目を確認し、スムーズな取引に向けて必要な準備を進めましょう。
「組織」である発注事業者と、「個人」として業務を受けるフリーランス事業者との間には、交渉力や情報収集力等に格差が生じやすく、そのためフリーランス事業者は弱い立場に置かれることが多くあります。そうした状況の改善のため、今年11月1日から施行されるのが「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、いわゆる「フリーランス法」です。この法律は、原則として事業者間
(BtoB)における委託取引を対象としています。
事業者間委託取引の例
・社内広報/商用の写真撮影をフリーカメラマンに委託する
・webデザイン・パッケージデザインをフリーデザイナー/イラストレーターに委託する
※消費者からの委託や売買契約は含まない
同法では、発注事業者がフリーランス事業者に対して果たすべき最大「7つの義務項目」(図表)が定められました。ポイントは、発注事業者が満たす要件によって、遵守すべき義務項目が異なることです。なお義務項目①の「書面等による取引条件の明示」については、「個人事業主」や「フリーランス事業者に業務委託するフリーランス事業者」など、従業員を使用していない事業者が業務委託を行う場合にも遵守すべき義務項目とされていますので注意が必要です。違反者には次のような罰則が科されます。
●義務項目に違反した場合
公正取引委員会・中小企業庁長官・厚生労働大臣から違反行為についての助言・指導・報告徴収・立入検査・勧告・公表・命令●命令違反や検査拒否等をした場合
50万円以下の罰金が科される可能性
法人両罰規定により、同法に違反した場合には、違反行為をした行為者だけでなく事業者にも罰金刑が科される可能性があります。また、同じフリーランス事業者に業務を委託する場合であっても、一定期間以上の業務委託なのか、単発の業務委託なのかで発生する義務項目は異なるため、注意が必要です。
施行日までに次のようなことを社内でチェックし、必要に応じて業務フローや委託内容等を見直して書面等を準備しましょう。
・「フリーランス法」の適用対象となる取引先は誰か
・その取引先に、どのような内容の業務を、どの程度の期間で依頼しているか
・報酬の額はいくらか、また支払期日はいつになっているか
・依頼している業務内容の条件等は適正か、見直すべき点はないか
義務項目 | 具体的な内容 |
---|---|
1.書面等による取引条件の明示 | 業務委託をした場合、書面等により、直ちに、次の取引条件を明示すること |
〇業務の内容 〇報酬の額 〇支払期日 〇発注事業者・フリーフンス事業者の名称〇業務委託をした日 〇給付を受領/役務提供を受ける日 〇給付を受領/役務提供を受ける場所 〇(検査を行う場合)検査完了日 〇(現金以外の方法で支払う場合)報酬の支払方法に関する必要事項 | |
2.報酬支払期日の設定・期日内の支払 | 発注した物品等を受け取った日から数えて60日以内のできる限り早い日に報酬支払期日を設定し、期日内に報酬を支払うこと |
3.禁止行為 | フリーランス事業者に対し、1か月以上の業務委託をした場合、次の7つの行為をしてはならないこと |
〇受領拒否 〇報酬の減額 〇返品 〇翼いたたき 〇購入•利用強制 〇不当な経済上の利益の提供要請 〇不当な給付内容の変更・やり直し | |
4.募集情報の的確表示 | 広告等にフリーランス事業者の募集に関する情報を掲載する際に、 〇虚偽の表示や誤解を与える表示をしてはならないこと 〇内容を正確かつ最新のものに保たなければならないこと |
5.育児介護等と業務の両立に対する配慮 | 6ヶ月以上の業務委託について、フリーランス事業者が育児や介護等と業務を両立できるよう、フリーランス事業者の申し出に応じて必要な配慮をしなければならないこと ※やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、配慮を行うことができない理由について説明することが必要。 |
6.ハラスメント対策に係る体制整備 | フリーランス事業者に対するハラスメント行為に関し、次の措置を講じること 〇ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、方針の周知・啓発 〇相談や苦情に応じ適切に対応するために必要な体制の整備 〇ハラスメントヘの事後の迅速かつ適切な対応など |
7.中途解除等の事前予告・理由開示 | 6か月以上の業務委託を中途解除したり、更新しないこととしたりする場合は、 〇原則として30日前までに予告しなければならないこと事前予告・理由開示 〇予告の日から解除日までにフリーランス事業者から理由の開示の請求があった場合には理由の開示を行わなければならないこと |