2024.06.10
令和6年6月から「定額減税」が始まります。所得税の定額減税は、原則として、年末調整時の「一括控除」が認められず、月々の対応が求められています。複雑になる給与計算事務を毎月、スムーズかつ適切に実施できるよう、準備しておくべきことを最終確認しましょう。
令和6年6月1日以後最初の給与・賞与等の支払いから始まる「定額減税」。
制度開始前に給与計算担当者が準備すべきことは、大きく分けて次の3つがあります。
(1)控除対象者の確認と減税額の確定
(2)「各人別控除事績簿」の作成
(3)給与等の明細書の様式の見直し
給与計算担当者は、まず、「令和6年6月1日」時点で、自社の従業員のうち「誰が」「いくら」減税となるのか一を確定しなければなりません。従業員から提出された「扶養控除等申告書」「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」から、その従業員の減税額はいくらになるか把握しましょう。図表を参考にしてください。
なお、令和6年中の所得金額の見積額が900万円を超える従業員の同一生計配偶者は、「扶養控除等申告書」に記載されていません。そのため、該当する配偶者がいる従業員からは、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」の提出を別途受けることが必要です。
また、16歳未満の扶養親族については、「扶養控除等申告書」の「住民税に関する事項」または「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」で把握することになります。
例年、年初に、従業員からは「扶養控除等申告書」を提出してもらっていますが、6月1日までに扶養親族の異動があった場合には再提出してもらいます。控除対象者とその人数を各従業員自身がしっかり確認し、正確に記載した書類を提出するよう、従業員に注意を促すことが大切です。
なお、共働きで、定額減税の対象となる16歳未満の扶養親族が複数人いる従業員には、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」に記載する扶養親族を分けることも検討してもらいましょう。それぞれに係る合計の減税額が少なくなる分、早く控除しきれるようになるため、月々の定額減税の事務負担を軽くすることにもつながります。
各従業員から「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」等の提出を受け、減税額が確定したら、「各人別控除事績簿」を作成すると良いでしょう。
「各人別控除自事績簿」は、各従業員の氏名、扶養親族等の人数、合計の減税額を記載した一覧表です。作成にあたっては「令和6年分源泉徴収税額表」から控除前税額を求め、控除額および残額を記入します。特に扶養親族が多い従業員の場合、減税額を一度に控除しきれず、数か月間減税の事務が必要となるケースも考えられます。定額減税の事務を毎月確実に、かつスムーズに行うためにも、制度開始前から各人・各月の控除額等を記録しておく書類をしっかり準備しておきましょう。
定額減税がスタートすると、各従業員の給与等の明細書に、「定額減税xx円」といったように、当該給与等の所得税から控除した額を記戴することが必要になります。
そのため、事前に給与等の明細書の様式を見直しておくことが求められます。給与計算いシステムを利用している場合には、控除額の記載に当該システムが対応できているかどうか、事前に確認しておきましょう。
6月初旬に給与・賞与の支払日がくる会社は特に早めの対応が必要!
注意すべきは、定額減税のスタートが「6月分の給与の支払い」ではなぐ「6月1日以後最初の給与・賞与等の支払い」であるということです。
特に、5月分の給与を6月初旬に支払う会社や、給与よりも先に賞与の支払日がくる会社では早めの対応が求められます。従業員から「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」等の提出を受ける日は、通常の給与計算事務を行う日から1週間-10日程度早く設定し、記載内容の確認と各従業員の減税額を確定するための時間を確保するようにしましょう。
国税庁のWebサイトには、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」や「各人別控除事績簿」等、定額減税に係る事務に活用できる書類の様式・記載例が公表されています。早めに入手し、準備しておきましょう。
【参考】
定額減税後に所得税の納付額が0円となる場合でも、「納付書」の提出は必要!各月の所得税の減税事務が終了した後、納付すべき源泉徴収税額がある場合には、「納付書」(給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書)に所要事項を記載の上、法廷納期限までの納付が必要になります。
所得税の納付額が0円となる場合でも、納付書の提出は必要とされていますので、注意しましょう。