2023.10.25
「固定費」とは、売上高の増減にかかわらず会社を維持するために必要な費用で、それをどう管理するかは「経営者の腕の見せどころ」です。適切に管理するためには、まず会社にとってその支出は本当に必要か、その支出額は適正なのかを把握することが大切です。
「固定費」は、売上高から変動費を差し引き、残った限界利益でまかないます。つまり、限界利益よりも固定費のほうが少なければ黒字、多ければ赤字となります。これは「限界利益の伸び以上に固定費が増えていれば赤字
に近づいている」ということでもあります。固定費を確認する際には注視しましょう。
固定費には次のようなものがあります。
人件費、福利厚生費、地代家賃、修繕費、水道光熱費、旅費交通費、通信費、広告宣伝費、租税公課、支払利息、減価償却費 など
多くの企業では近年、水道光熱費の値上がりや賃金アップなどにより、固定費が増加傾向にあります。そうした中で適切な固定費の管理は、今後の会社の維持・成長に欠かせない社長の重要な仕事といえるでしょう。まずは次の3つの視点から、「支出は適切か」「大きな増減はないか」などを点検しましょう。
固定費には、自社の努力で短期的に管理可能(削減可能)なものと、短期的には管理不能(削減が困難)なものがあります。
例えば、水道光熱費は節水・節電の徹底で減らすことができるため、管理可能なものといえます。一方、地代家賃は、決められた賃料を支払う契約で、短期的には管理不能なものとなります。
しかし、中長期的な観点や経営者の意思決定次第ではこれらの固定費も削減可能になる場合があります。
また、管理可能な固定費の中には、社長だからこそ管理できるものと、各部門・支店、部下社員等でも管理できるものとがあります。
固定費削減の目標や計画をつくる場合は、社内の誰が、どんな固定費について管理するのかを明確にしておくことが重要です。
固定費は、いわば限界利益を稼ぐための支出といえます。単純に削減をしたとしても、利益の増加に結び付かないケース、逆に利益を減少させてしまう場合もあります。
固定費の改善について考える際は、単純な「コストカット」ではなく、かけた費用に見合う効果が得られているかという「費用対効果」の視点が重要です。
例えば、広告宣伝費は「費用対効果」がイメージしやすい固定費の1つです。DM等の送付が実際の売上高にどれくらいつながったのか、その効果を測定すると、今後も続けるべきかどうかがわかります。このように自社の固定費の効果を確認していくと、見直すべき優先順位が明確になります。
現状のヒト・モノを効果的に活用するために稼働率を高めるという視点を取り入れましょう。例えば、機械の維持費等、使わなくても費用が発生し、かつ、短期的に削減するのが難しい固定費については、新規の仕事の受注などでその稼働率を高め、売上高や限界利益の増加につなげるという発想です。
生産性向上という観点からも、現状の自社の機械・設備等を有効に活用できないかどうかを見直してみましょう。
【参考】固定費と変動費の区分を見直してみましょう
業種業態によっては、固定費になるはすのものに、変動費の要素が含まれている場合もあります。
例えば「電気こ使用量のお知らせ」。
光熱費は全て固定費とする会社が多いかもしれませんが、もし繁忙期以外は基本料金程度であれば、従量制の料金(赤色囲み部分)については変動費に区分したほうが実態に合っているといえます。
「売上が増えるほどかかる」という観点から、固定費の中で変動費にでるものが含まれていないかを見直してみましょう。
【固定費を点検する際のポイント】
●在宅勤務の導入で通勤交通費を実費精算に切り替え、定期代より安くできないか
●社内業務を外注にすることで利益の増加を図れないか(逆に外注業務の内製化の検討も)
●不要資産の売却・処分で維持管理費や固定資産税を削減できないか
●残業代を減らす取り組みを行っているか
●過去の交際費は、現在の具体的な成果になっているか
●DMの申し込み率など、広告宣伝費や販売促進費の費用対効果を測定しているか
●電話・FAX郵便からメール・チャットヘ切り替えることで通信費を削減できないか
●節水機器や省エネ設備の導入、新電力への切り替え等で水道光熱費を抑制できないか
●新しい機器を購入する際、ほかの手段(現状の機器の修繕、中古品や低グレ託等)と比較して検討しているかード製品の購入、業務委託等)と比較して検討しているか
●ITの活用や改善提案で、業務改善を継続的に検討しているか
●給与体系をより自社に合ったものにできないか